税理士をタダで利用する法
※文章は2000年6月の法律を元に記述されています
1. 税理士を利用しない訳は…
個人事業者では、税金の申告を税理士に依頼している人は決して多くはありません。自分で書いて提出する人や、商工会議所(商工会)、青色申告会、農協等で相談して書いてもらう人、確定申告無料相談会を利用する人、あるいは税務署に相談する人など、その方法はさまざまです。法人でも、小規模零細企業であれば、税理士に依頼していない会社は決してめずらしくありません。
なぜ税理士に依頼しない人が多いのか、その理由はいろいろありましょう。
まず第一に、料金の問題があります。税理士会が作成した税理士報酬規定は目の玉が飛び出るほど高く、実勢価格はその半分以下でしょうが、中には報酬規定からあまり値引かずに請求してくる殿様商売の税理士もいます。大半の税理士、特に若手税理士は、零細業者の実態に即した良心的料金で業務をしていると思うのですが。
第二に、事業が赤字であったり、あるいは利益が少なく、税理士に依頼しても料金に見合うだけの節税メリットがない、と考えている事業者もいます。赤字ならば自分で申告しても税金はゼロで同じ、あるいは節税額よりも税理士報酬の方が高い、という考えです。
第三に、税理士全体の平均レベルは、必ずしも高いとはいえないという点です。国家試験である税理士試験は、全部で五科目合格する必要があり、科目ごとの合格率は10%強ですが、最終的に五科目合格して官報に名前が載る人は、全国で6万人の受験者のうち千人前後にすぎません。しかしながら、この試験で合格した人は税理士全体の4割程度で、大半の税理士はこの試験を受けずに税理士になっています。たとえば、税務署などの税務行政に23年勤務すれば、試験免除で税理士になれます。あるいは大学院に行き、一定の科目を履修すれば試験が免除される特典もあり、法学系と商学系の大学院のそれぞれ修士課程に行けば、4年で税理士試験全科目免除となります。難関国家試験がある反面、苦労のいらぬ王道もあるため、税理士のレベルは玉石混淆です。実際、顧客に対し、経営面のアドバイスはもとより、税金面のアドバイスもまったく行わない税理士も中にはいます。
第四に、税理士に依頼しなくても、前述したさまざまな方法で、申告書の作成は可能であることです。合法的な各種相談機関の利用だけではありません。非合法である無資格のニセ税理士も、記帳代行業やパソコン経理業、あるいは他士業資格を隠れみのにして、ばっこしています。税法の知識の乏しい個人事業者や社長さんは、ニセ税理士が税法の知識や特典を利用した有利な申告をせず、会社にとって不利な選択やミスをしても、それを見抜く眼力がありません。料金面でも、ニセ税理士は決して安くはないのですが。
2.税理士をタダで利用しよう
一見料金が高く、敷居が高そうに見える税理士でしょうが、まったくのタダで利用できる方法があるをご存知でしょうか?
まず、一回限りの相談だけでかまわない場合です。たとえば、所得税確定申告書のチェック、年末調整のチェック、個人事業開始時の各種届出、法人設立時の各種届出、記帳の方法、不動産の譲渡、住宅の取得、贈与や相続の相談などです。こんな時には、次のようなところがあります。
イ. 市役所(区役所等)の、税理士無料相談コ−ナ−
市役所などの地方自治体は、毎月日にちを決めて、税理士による無料相談コ−ナ−を設けています。日程は市役所の市報に載っていますし、電話でたずねてもよいでしょう。申込者が多いため、事前に電話予約する必要があります。欠点としては、相談者一人あたりの相談時間が決められており(市川市は20分)、時間をかけてじっくり相談することができないことです。申込者が多いので仕方がないのでしょう。なお、市役所から税理士会支部に税理士の派遣依頼があり、割り当てられた税理士が担当しています。
ロ. 商工会議所(商工会)の、税理士無料相談コ−ナ−
商工会議所(商工会)でも、毎月日にちを決めて、税理士による無料相談コ−ナ−を設けています。日程は商工会議所の新聞を見るか、または電話でたずねてください。こちらも事前予約制ですが、時間に空きがあればいきなりの飛び込み相談も可能です。原則として商工会議所の会員が対象ですが、非会員の人でも受け付けてくれます。市役所と異なり、相談来訪者が少ないため、一人一人じっくり時間をかけて相談できます。但し、所得税の確定申告時期は予約でいっぱいになりますが、それでも他の相談窓口よりは一人当りの割り当て時間が多いため、丁寧な応対が可能です。なお、商工会議所以外にも、郵便局でも税理士の無料相談があります。
ハ. 税理士会支部の税理士無料相談日
各地の税理士会支部でも、毎月日にちを決めて、無料相談コ−ナ−を開設しています。これも事前予約が必要です。日程については、各地の税理士会支部にお問い合わせください。こちらも相談来訪者が少ないため、ゆっくり相談できますが、欠点としては、税理士の繁忙期である確定申告期とその前後は休止してしまうことです。
ニ. 電話等による無料相談
組織として行っているわけではありませんが、税理士のなかには、事務所の宣伝を兼ねて、個人的に無料相談を受け付けている人もいます。税理士の電話帳広告などを調べて、無料相談を謳っている税理士に電話をしてみるのも一法でしょう。手軽に利用できるのが長所です。電話相談のほかに、近年インタ−ネットによる無料相談を受け付けている税理士もいます。質問事項をEメ−ルで送れば、後日Eメ−ルで返信がくるのですが、税理士側とすれば、細かい前提条件をたずねながら返答できる電話相談の方がやりやすいし、一方通行のEメ−ルでは間違った返答となるおそれもあります。なお、電話、Eメ−ルいずれでも、相談は受け付けるが有料、という税理士もおりますので事前に確認してください。
以上、一回限りの相談方法を紹介いたしましたが、継続して数回にわたり無料で相談にのってほしい、という人向けの制度もあります。税理士業界で「継続記帳指導」といわれている制度です。会社を設立したり、個人事業を開始したものの、帳簿の付け方が分からない、という場合に利用します。
この制度を利用できるのは、個人事業者か、法人に限られます。所轄の税務署に電話をして、税理士会の記帳指導を受けたい旨伝えれば手配してくれます。あるいは、個人事業者が青色申告の届出をすると税務署から記帳指導希望の有無のアンケ−トが来ることがあり、それに税理士会の記帳指導希望、と書いて返事を出せばよいのです。なお、記帳指導のシステムは、税務署が作成した記帳指導希望者リストを税理士会支部に送り、支部が希望する税理士に割り振る形になります。
割り当てられた税理士は、記帳指導をする事業者や企業を最低4回以上訪ね、帳簿のつけ方や決算書の作り方などを指導します。利用は無料ですのでお得な制度と思います。税理士には、税務当局から、1回当り五千数百円の手当が支払われます。安い手当ですので、主に開業したてで暇のある税理士が希望に応じて担当しています。遊んでいるよりはいくらかでもお金になった方がいいことと、もしかしたら顧客になってくれるかも、という期待からです。なお、相談者の内容やプライバシ−を税理士が税務署に漏らすことは、職業倫理と守秘義務からして、通常はありません。
この制度の欠点としては、来てくれる税理士を選べないことですが、タダですから贅沢はいえません。なお、記帳指導は税理士会以外の団体も受託しておりますので、税理士の派遣を希望する場合には、必ず「税理士会を希望」と伝えることが必要です。
以上、無料で税理士のアドバイスを受けられる方法を述べましたが、やはりある程度の会社や個人事業者であれば、有料で税理士と顧問契約を結び、常時相談できるようにしておくべきです。専門家の指導がないと、たとえ本人は気付かなくても、意外なところで不利な選択をして大損をしていたり、税務調査の時に税務署のいいなりになって、成績かせぎのいいお客さんになったりするからです。
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