税金についての質問についてお答えいたします。これからも、随時更新いたしますので、質問のある方は「アクセス」のメールフォームよりどしどしお寄せください。

会社所有車の自賠責保険

小さな会社を経営しております。
このたび税務署の税務調査を受けました。その際、当社が所有する車の自賠責保険につき、争いとなりました。当社は10月決算ですが、H14年の10月中に3台の車の車検があり、3台分約18万円の自賠責保険(2年分)を支払い、経費に入れました。しかし税務署員は、その支出の効果が1年を超えるので、支出時の損金(必要経費)として落とすことはできず、前払費用として資産計上しなければない。保険期間で按分した24分の1しか損金として認められないと言っています。
当社は過去も自賠責保険は全額支出時の経費で落としており、こんなことを言われたのは今回の調査が初めてです。税務署員の言うとおり修正申告に応じなければならないのでしょうか。

ずいぶんと馬鹿げたことを言う調査官ですね。きっと調査でほかに何も問題点が見つからなかったが、手ぶらで帰る(申告是認といいます)と税務署の上司から受ける自分の査定に響くと考え、あえていちゃもんを付けて、金額は僅少でも修正申告を取ろうとしたのでしょう。たまにはいるんですよ。この手の手合いが。

しかし、財団法人大蔵財務協会が発行している「法人税質疑応答集」のH12年版では、自賠責保険について支出時の損金経理が認められると書いています。この書籍は、見解に係る部分は個人のものとの断わり書きを付けているものの、東京国税局課税第二部法人税課の執筆となっています。

その要旨は次の通りです。

自賠責保険契約は、その締結が強制されていることから、その契約に係る保険料は一種の租税公課とも考えられ、また、その保険料の支払いがなければ車検を通らないことから、車検費用の一部とも考えられます。したがって、自賠責保険契約は一般の損害保険料とその性格が異なり、保険期間も最長3年であり、かつ保険料も少額であることから、しいて期間対応して損金算入額を計算しなければならないものとは考えられないため、貴社が継続して支出時の損金に計上している場合は、その処理が認められるでしょう。と、書いてあります。

ほかにも、三輪厚二「生命保険・損害保険の活用と税務」(清文社)にも自賠責保険は租税公課としての性格もあるとして支出時の損金算入が認められると書いてありますし、他にも同様の記載をした本がいくつもあります。ただ、ひとつ気になることは、前述した大蔵財務協会の「法人税質疑応答集」のH14年版では、その自賠責保険の応答が削除されているのです。紙面の編集の都合による質問の入れ替えか、それとも税務当局がひそかに取り扱いを変更したのかは分かりませんが。もしも当局が取り扱いを変えたのならば、通達等で明文化し、一般に公表すべきでしょう。

いずれにせよ、今回の税務調査における自賠責保険の件は、貴社が断固として修正申告に応ぜず、「納得できないので修正申告はしません。どうぞ更正処分をしてください。国税不服審判所で争います。」と答えれば、税務署は手出しができません。不服審判所では、納税者側に軍配が上がる可能性が高いからです。

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018)会社所有者の自賠責保険