税金についての質問についてお答えいたします。これからも、随時更新いたしますので、質問のある方は「アクセス」のメールフォームよりどしどしお寄せください。


役員報酬の未収計上

当社は、社長の役員報酬につき、社員総会と取締役会において月額150万円と決議されています。その役員報酬月額150万円のうち、毎月30万円ずつは社長に渡さず、会社の総勘定元帳(帳簿)で未払金として経理しています。そして7月と12月に各180万円ずつを、未払金の清算として社長に支払いました。毎月の帳簿では、社長の役員報酬として150万円を経費計上し、給与に係る源泉所得税も150万円の給与に対応する額を徴収しています。この7月と12月に支払った各180万円は、役員報酬の未払部分の清算として、会社の損金になるでしょうか。

残念ながら、その未払金の支払も役員賞与とされてしまい、会社の損金にはなりません。

類似事件について、平成6年4月、および平成元年6月の国税不服審判所裁決があり、毎月未払金経理した上での未払金の賞与時支給は役員賞与であるとされ、損金算入が否認されています。

すなわち、会社には毎月定額計上した役員報酬の未払金を支給日に支払えない特段の事情がなく、未払金計上は不自然かつ理由がなく、毎月の未払金は定期の給与といい難く、その未払金を賞与支給時期に払ったことは、賞与として支給すべきものを帳簿上定期の給与として損金に算入するため、形式的に役員報酬の一部未払として経理したものにすぎず、実質的に役員賞与であるというのです。

しかし、未払経理に特段の事情がないことと、賞与となる「臨時的給与」との関連性は証明されていませんし、7月と12月に払ったということだけでは役員賞与とする根拠が薄弱です。また、形式的に臨時的給与か否かで賞与と報酬の区分をしている以上、この部分だけ実質判断を持ち込むのは法律の解釈として疑問が生じます。さらに、もしも会社が役員報酬は毎月きちんと全額支給し、それとは別に会社が毎月定額を役員から借り入れ、その借入金の返済を7月と12月にした場合でも賞与とみなされるのか、という疑問も残ります。

しかし、このような裁決が出ている以上、会社として、役員賞与とされないようにしつつ、どうしても7月と12月にお金を渡したいならば、毎月の給与から役員本人名義で銀行等の天引き預金をし、通帳等は本人が管理していつでも本人の意思だけで引き出せるようにした上で、本人の意思により7月と12月に預金をおろせば、税務当局としても文句のつけようがなく、安全でしょう。
バックナンバー
001)医療費控除の訂正について
002)相続財産中の郵便貯金について
003)贈与における注意事項について
004)会社の精算について
005)遺産の相続手続きを失念した場合
006)年末調整、どうしたら有利?
007)国税徴収官って?
008)減価償却の申告のやりなおしはできる?
009)消費税を納税できない!
010)株券の発行は省略できる?
011)税務調査を録音するのはOK?
012)保証人を降りるには?
013)社会保険料が支払えない!
014)外国に本社がある場合の資本金は?
015)役員報酬の支給不足額について
016)役員報酬の未収計上
017)個人商売の所得税確定申告
018)会社所有者の自賠責保険