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会社の清算について

主人が建設関係の零細企業(資本金300万円の有限会社)を経営していましたが、H12年1月に急逝してしまいました。妻である私には、会社をそのまま継続させるだけの力はなく、会社の後継者もいないため、会社を解散しようと思います。主人の死後2人の従業員も退職し、会社の借金は主人と私からの借入金約400万円を除いて全額返済し、買掛金や未払金も全額弁済したところ、銀行預金約50万円と期日が数ヶ月先の受取手形約200万円、売却価値のない中古車2台、電話1本が残りました。会社にはそれ以外に不動産などの換金可能な財産はなく、会社の所在地は主人の自宅となっています。会社は8月決算で、前期のH11年8月期では、法人税申告書上の繰越欠損金が約300万円あります。しかし、未払税金や銀行等外部からの借入金、買掛金その他の債務はありません。主人は会社の法人税申告書は自分で書いており、税理士に頼んでいませんでした。会社を解散するにはどのようにすればよいでしょうか?

誠にお気の毒です。心からお悔やみ申し上げます。

まず、会社を解散する場合の手続についてご説明いたします。この場合、まず法務局出張所(登記所)で会社の解散登記をします。ご自身でできなければ、司法書士に依頼します。次に、前期決算以降のH11年9月より解散日までの法人税申告書と、法人の解散届(解散が記載された謄本のコピ−を添付)を税務署に提出します。県税事務所や市役所にも申告と届出が必要です。さらに、清算により残余財産が確定してから1ヶ月以内に、「清算確定申告書」を提出し、残余財産の価額が資本等の金額と利益積立金額等の合計額を超えていた場合には、清算所得に対する法人税を納付します。また、一定の場合には、「清算事業年度予納申告書」や「残余財産分配予納申告書」の提出が必要となる場合もあります。この税務署への手続きは税理士に依頼されるほうがよいでしょうが、商工会議所の無料税務相談にお越しくださるのも一法です。

ご質問の内容からはそれますが、会社を解散せず、会社を第三者に売却する方法も考えられます。解散してしまえば費用がかかるだけですが、もしも会社を売却できれば、いくらかのお金が手に入るからです。形の上では、会社の出資(有限会社なので株式といわず、出資という)をすべて売却することとなります。これができるのは、会社に未払税金や返済義務を伴う銀行等の借入金、支払義務のある買掛金などの債務がない場合に限られます。会社の買い手としても、新規に会社を設立する場合には、資本金300万円の有限会社でも、登録免許税や定款認証印紙代、司法書士手数料、銀行証明書手数料などで26〜27万円位かかりますし、さらに、買収した会社に法人税法上の繰越欠損金があれば、その欠損金に達するまでは利益を上げても法人税がかかりませんので、大いにメリットがあります。会社を買収した後は、本店移転と役員変更、商号変更登記などをしてから、自分の会社として活用することになります。ただ一つの欠点としては、会社を買収してから数年間は、銀行が融資をしたがらないことです。うさんくさい会社だと思うのでしょうか。

また、会社を清算するには費用がかかるし、会社の買い手も見つからない場合には、いっそのこと倒産させてしまう奥の手もあります。この場合、裁判所に破産の申し立てなどをすると費用がかかりますので、一切何もせず放置しておくのです。これができるのは、亡くなられたご主人やそのご遺族、親戚や知人が会社の債務の保証人になっていないことと、会社に換金可能な資産がない場合に限られます。保証人になっていたり、会社名義の預貯金や不動産があれば、この手は使えません。この倒産という手法を使うならば、ご主人と奥様からの借入金の返済という形で、会社の資産を事前にすべて奥様等の名義に移管し、税務署、県税事務所、市役所には休業届けを提出します。その上で、会社についてその後一切手を触れず、放置して自然消滅させます。休業しても法人税の申告義務はありますので、毎年税務署から申告書の用紙が送られて来ますが、提出せずに放置し、電話がかかってきたら倒産しましたと答えれば、数年後には申告書用紙も送ってこなくなります。株式会社の場合、役員の任期が切れれば役員変更登記失念の罰金がくることがありますが、有限会社ならばその心配もありません。(株式会社ならば、罰金を避けるため、解散の登記だけはしておいてください。)この倒産の場合、取引先や銀行等の債務があれば相手方は訴訟を起こしてくるでしょうが、出廷せずに敗訴させます。しかし会社名義の資産もなく保証人もいなければ、相手方は差し押さえもできず、勝訴の判決は画に描いた餅にすぎません。ただ、この方法の欠点は、会社に買掛金やマチ金からの債務があった場合、ヤクザが取り立てにくることがあることです。脅されるだけで暴力沙汰になることはあまりありませんが、心臓の強い人でなければ参ってしまいます。しかし、銀行や税務署は法律にのっとった回収法しかできませんし、特に弱いものの味方?の税務署は、仮に未払の源泉税や消費税があったとしても、会社が倒産したとなれば数年で回収をあきらめてくれます。未払税金には法律上の時効はないのですが、税務署とて打つ手がないのでしょう。まして、会社の債務を全額弁済した後でこの倒産という手法を使えば、取り立てに来る人もなく裁判を起こされる心配もなく、清算手続きのような出費もなく、ビタ一文使わずに済むのです。
バックナンバー
001)医療費控除の訂正について
002)相続財産中の郵便貯金について
003)贈与における注意事項について
004)会社の精算について
005)遺産の相続手続きを失念した場合
006)年末調整、どうしたら有利?
007)国税徴収官って?
008)減価償却の申告のやりなおしはできる?
009)消費税を納税できない!
010)株券の発行は省略できる?
011)税務調査を録音するのはOK?
012)保証人を降りるには?
013)社会保険料が支払えない!
014)外国に本社がある場合の資本金は?
015)役員報酬の支給不足額について
016)役員報酬の未収計上
017)個人商売の所得税確定申告
018)会社所有者の自賠責保険