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役員報酬の支給不足額について

当社は、社長の役員報酬について、定時株主総会において年額1千万円以内と決議しており、取締役会では月額80万円、年額960万円と定めています。しかし会社の資金繰りの都合上、毎月の支給日には月額40万円のみを支給し、取締役会で決めた報酬額との差額の一年分480万円を、期末に未払金として必要経費として処理し、損金に計上しました。
しかし税理士から、この480万円は臨時的給与である役員賞与に該当し、会社の損金に算入できないといわれました。当社としては、決定済みの役員報酬の支給不足分を、期末に一括計上しただけですので、経費にならないといわれても納得できません。この役員報酬の未払金計上は、本当に損金に落ちないのでしょうか。

残念ながら、期末に一括未払計上された役員報酬は、税法上役員に対する賞与として取り扱われるため、損金になりません。

役員に対する賞与は、法人税法第35条により、使用人兼務役員に対する使用人分賞与を除いて、会社の損金すなわち必要経費に算入できないこととなっています。
ご質問の件の類似事件で、税務調査を受けて期末一括未払計上の役員報酬の損金算入を否認された会社が、裁判に訴えた事件があります。しかし、昭和59年12月の最高裁小法廷判決では、期末一括未払計上の役員報酬は賞与であるとされ、損金算入を認めず、会社側の敗訴となりました。

役員に対する給与が報酬となるか賞与となるかは、原則として「定期の給与」か「臨時的な給与」かによって判断されますが、法人税基本通達9−2−13によれば、「定期の給与」とは「あらかじめ定められた支給基準に基づいて、月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給される給与」であるとされ、特定の月だけ増額支給された場合は、増額部分は臨時的給与とされるとしています。この場合、その実態からみて臨時的給与であり、賞与とされたわけです。

なお、ご質問の件とやや異なるものの共通性がある事件ですが、あらかじめ定められた基準に基づき特定月に増額支給した場合における、役員報酬の増額支給部分の損金算入の是非が争われた判例もあります。

この会社は、定時株主総会で決議された役員報酬総額の枠内で、取締役会の決議により、代表取締役の役員報酬を年額1,100万円以内とし、7月と12月に各125万円ずつを、その他の月に各85万円ずつを支給する旨決定し、その通りに支給しました。しかし税務調査があり、7月と12月における他の月との支給差額各40万円ずつは役員賞与とされて、損金算入を否認されました。

会社は裁判で争いましたが、昭和57年7月の最高裁小法廷判決は、7月と12月における報酬増額部分は、わが国の給与慣行からみて経常性を有するものではないため、「臨時的給与」の役員賞与であるとして、その損金性を否認しました。

法人税基本通達9−2−13の(注)は、役員報酬を年額で定め、その範囲内で毎月定額を支給するほか、特定の月だけ増額支給した場合は、年額の範囲内であっても、増額支給部分は定期の給与に該当しない、と書いてありますが、判例もその立場に立ったわけです。

この会社の場合、7月と12月の増額部分を他の月に均分して、毎月同額の役員報酬を支給すれば損金として認められたはずで、報酬と賞与の区分は全く形式的なものとなっています。
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