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減価償却の申告のやりなおしはできる?


賃貸マンションを経営している個人です。貸している建物や建物付属設備、構築物は、H8年に新築したものですが、減価償却はずっと定額法で計算して申告していました。しかしH12年2月に、知人より、減価償却は定額法ではなく、定率法にすると減価償却費が約2倍に増えて有利だと聞き、H12年3月15日までに、H12年分以降の減価償却方法を定率法に変更する旨の届出書を税務署に提出しました。しかしながら、H13年3月に提出したH12年分所得税申告では、前年に減価償却方法の変更届を提出したことをうっかり忘れ、定額法で計算して提出してしまいました。今からでも定率法で申告をやり直すことができるでしょうか。

この場合は、税務署に「更正の請求書」を提出すれば、税務署が定率法による減価償却費で所得金額を計算した減額更正をして、納めすぎた所得税を返してくれます。更正の請求とは、申告を間違えて過大申告をした場合に、正しい金額に訂正してほしいと請求することで、用紙は税務署にあります。

所得税は法人税と異なり、「強制償却」といい、あらかじめ選択した方法による減価償却を必ずしなければなりません。万一失念しても、資産の未償却残高は、減価償却をしたものとして減額されてしまいます。所得税の場合、過年度から所有している資産の減価償却方法を変更する場合には、変更する年の3月15日までに変更届出書を提出しなければなりません。質問者はこの用件は満たしています。したがって、「更正の請求」をすることができます。更正の請求をする権利は、法定申告期限から1年間で時効となります。したがって、H12年分所得税であれば、H14年3月15日までに更正の請求をする必要があります。更正の請求書を提出し、実際に還付金が振り込まれるまでの期間は、おおむね3箇月以上かかることが一般的です。

個人の減価償却方法変更届出書の提出期限は上記の通りですが、新規開業の場合や、今まで持っていない新たな種類の資産を取得した場合の減価償却方法の届出は、申告期限まででかまいません。ちなみに法人の場合には、減価償却方法の変更届の提出期限は前期末日までです。また、減価償却方法の届出をしなかった場合には、個人は定額法、法人は定率法で償却します。

なお、法人の場合には、減価償却費の計上は、届出た償却方法の償却限度額以内の金額であれば任意で、償却をしないことも認められます。しかしいったん申告書を提出してしまった場合は、たとえ計算を間違え償却限度額に満たなくても、税法上のミスにはならないため、更正の請求はできません。

もうひとつの注意点として、建物については、H10年4月1日以降に取得したものは、定額法のみしか選択できません。一方、H10年3月以前取得の建物であれば、今からでも定率法への変更は可能です。建物以外の資産である、建物付属設備や構築物、備品、機械、車両などについては、取得時期にかかわらず定率法の選択が可能です。減価償却方法は、個々の資産ごとに選択するのではなく、同一種類の資産ごとに選択することもお間違いなく。また、いついかなる場合でも定率法が有利とは限らず、取得後耐用年数の相当期間が経過している資産の場合には、逆に定額法が有利なこともありますので注意してください。
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