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社会保険料が支払えない!


従業員10人余りの零細企業を経営しています。会社の売上は年々減少傾向にあり、ここ数年ずっと赤字決算を続けています。従業員と役員は、政府の健康保険と厚生年金に加入していますが、会社の資金繰りがつかないため、ここ2年ほど社会保険料の納付を滞納していたところ、社会保険事務所から、会社の銀行預金と得意先に対する売掛金を差し押さえられてしまいました。会社には溜まった社会保険料を支払うだけの資金はありませんし、会社の現状では銀行の融資も無理です。どうすればよいでしょうか。

社会保険事務所は、保険料を滞納したとしてもいきなり差し押さえをしてくることはなく、その前に何度か督促があったはずですし、督促状には、納付しなければ差し押さえをする旨の記載もあったはずです。御社は督促状を受け取ってもたかをくくっていたのでしょうか、それともどうしても資金繰りがつかなかったのでしょうか。

社保事務所側とすれば、保険料を滞納されても、社員の健康保険証を取り上げることは法律上できないので、健康保険の給付はしなければならないし、社員の将来の厚生年金の加入期間にも算入されるので、強硬手段もやむを得ないでしょう。

現時点では、社保事務所に行き、会社の窮状を話して、保険料を分割払いにしてもらうしか方法がないでしょう。誓約書とか弁済計画書のようなものを書かされるかも知れませんが、社保事務所は分割払いを認めてくれるはずです。この際に注意すべきことは、会社の未払い保険料について、社長個人は絶対に保証人になってはいけない、という点です。仮に社保事務所に先日付小切手や約束手形を渡す場合でも、社長個人が裏書をしてはいけません。裏書をすると、会社が倒産して不渡りになった場合に、社長個人が支払わなければならないからです。

今からでは間に合いませんが、会社が社会保険料を払えなくなる前に、健康保険と厚生年金(この二つを社会保険といいます)から脱退すべきでした。法人ならば、たとえ社長一人だけの会社でも法律上では社会保険は強制加入となりますが、実務では、社会保険に加入しなくても罰則はありません。会社が休業して全社員が退職した、という名目で脱退届けを出せば、特に調査に来ることもなく、すんなり受理されます。社保事務所としても、保険料を滞納されるよりは脱退してくれる方がありがたいのでしょう。

会社としても、保険料を滞納して差し押さえを受ければ、銀行の信用はゼロとなりますし、得意先からも危険な会社と思われますので、営業上致命的な打撃を受けます。それならば従業員には迷惑をかけますが、事前に社会保険から脱退した方がましです。従業員には会社の窮状を正直に話し、業績が回復した折には再度加入することを約束すれば、従業員としても会社が倒産したりリストラで解雇されるよりはましですから、協力してくれるはずです。従業員は、各自で国民健康保険と国民年金に加入することになります。

ただ、社会保険は脱退しても、労災保険と雇用保険(この二つを労働保険といいます)は加入を継続すべきです。労働保険への加入は、人を雇用する上での会社の最低限の義務だと思います。

それにしても、社会保険と労働保険の四つ全部に加入すると、会社が負担する保険料は給与総額の15%近くになります。中小零細企業にとって、この負担は高すぎると思いませんか。
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